キーを一つひとつ確かめながら打ったんだろうな…送信を押す時、緊張したかな。平仮名だらけのメールを読みながら、僕はお客様の表情を思い返しました。

佐藤耕作・27歳です。当時勤めていた▲▲本店にそのお客様が来店された日は、今も覚えています。いかつい眼、への字口。歳は70歳位。キツそう…が第一印象でした。 お客様はPCを何度も覗き込んでは眉間にしわを寄せ…突然
「君、どのパソコンがいいんだ?さっぱり分からん」
と険しい声で呼びかけてきたのです。続けて
「第一、何だ?この『メモリ』とかいう数字は」
「ああ、メモリとは…要するに『お手伝いさん』でして」
「はあ?」
「お手伝いさんが多いと、仕事もはかどるでしょう。メモリも多い方が、作業はスムーズなんです」
初心者のお客様に性能の話をしても、理解できません。だから僕はよくこういう例えを使います。お客様に納得して頂くために。
「なるほど…」合点がいった表情でお客様は
「最近はパソコンで株が買えるんだって?私も始めたいんだが」
声は、さっきより和らいでいました。この日、お客様はご紹介したPCを購入。セッティングのため僕はご自宅に伺いました。
「これでネットにもつながりますし、メールもできます」
「メールねえ」
「お子さんに送ったりすると喜ばれますよ」
そう話すと、いかつい頬が少し緩んだようです。そして「お茶、飲んでけ」とお茶とお菓子を出してくれました。(後略)