化粧筆でも書道筆でも、筆を支える軸は、どれも丸まっとる。てっぺんから軸先まで几帳面にまっすぐな円柱みたいなのもあるし、なだらかな丘のようにゆったりふくらむやつもある。指で支えるものやから。使う人の心を落ち着かせるにはふくよかな丸みのある軸の肌触りが必要なんよ。

筆の軸には竹やプラスチックもあるけど、ウチで造るのは木製。角材の状態の木を、お客さんの注文書に沿って長さを合わせ、ろくろを使って丸みをつけていく。 繊細な曲線もろくろ機で自在に削れるのが、ウチの自慢の一つ。仕上げに人の手でふくよかさを加えて、銅で磨いて漆などを塗ったら完成だ。

軸ってのは筆の中で、脇役かもしらんね。筆先の具合はみんな気にするけど、軸を気にする人はあまりおらん。でも私らにとっちゃ「気にならん」てことがほめ言葉、とも思う。 そんだけ丸みが人の手になじんでるってことやから。

私たちの役目は、注文どおり軸を作ること。でも「ふくよかな丸み」って注文を忠実に形にするのは簡単じゃない。機械がどんだけ便利になっても、手抜きはすぐわかる。本物になるまで10年はかかるかもしらん。あくせくしてもしゃあない。時間のかかることは、時間をかけて覚えたらいい。

声の大きなヤツばかり得する、とんがった世の中やけど、ふくよかな丸みにこだわる無骨者の集まりが、一つくらいあってもいいやろ。