アセチレンと酸素の混合ガスを燃料とする、バーナーの先から出る青白い炎。 炎の先には合金鋼の大型スクリュー。製鋼所など過酷な条件で稼動する成型機に用いられるこれらの部品には、高い強度が求められる。

大きな部品で直径45cm、長さ12mに及ぶスクリューの表面に、炎をあてて強度をアップさせる。「炎焼入れ」と呼ばれるこの熱処理を施すのは、当社で30年のキャリアを持つ田中康夫。

田中は焼けた金属表面に目を凝らす。 素人には「赤」としか見えない色の僅かな変化を、彼の眼は正確に捉え、あとどの程度の熱が必要か判断。混合ガスの配合を指で操作し、炎の温度を850~920度まで自在に変えることができる。ここまでの技能を持つ者は、国内に数えるほどしかいない。

1個数千万円もする大型スクリューの熱処理をお願いできるのは、ここしかない。そう言って多くのメーカーが依頼を持ち込む。田中はその期待に、30年鍛えてきた眼と指で応えている。 (後略)